あるスポーツで少年ながら天才と呼ばれた子がいます。そのお母さんが育て方について本を出版していました。それによると、子供の能力を上げるために普通では考えられないほど様々なことに気を使い、子供の能力を上げることにすべてを掛けてやってきた結果だとされていました。
私はその考え方を肯定します。普通では絶対にできないほどの気配りをすることで、子供の能力は上がっていくと私も信じています。
でももしこの考えが正しいとしたら、世の中で当たり前になっていることを、少し考え直す必要がある気がしてきました。
子育てがおろそかになると子供の能力は伸びない
オリンピック選手やプロアスリートは、みな競技に打ち込みます。練習が生活のほとんどすべてになっている人も多いでしょう。そして素晴らしい結果を残した時に、ファンから称賛されるのです。
私もスポーツが大好きなので、スポーツイベントで好成績を収める選手に感動していました。何も考えずに「勝ったこと」に感動し、そして負けても「頑張って努力してきたこと」に感動していました。
しかし私に子供ができてから、少しだけ違和感を覚えることがありました。ママさんアスリートに対して、「お子さんも将来、ママのことを誇りに思う時が来るでしょう」と言うような意見を聞いた時です。
競技に打ち込んでいたら、子供にすべてをかけるような子育ては絶対にできません。
天才少年を育てた親御さんは、いつも子供の状況を細かく観察し、子供に対して少しでもプラスになるよう考え続け、実践しています。競技に打ち込んでそれが中心の生活では、子供との触れ合いも少なくなるでしょうし、何より少しでも子供の能力を高めるように行動することができなくなります。
もし天才少年の親がアスリートで子育てよりも競技のことを考える人だった場合、天才少年は存在しなかったことになります。
「真剣に子供の能力を上げることを考えて子育てすると、能力が本当に上がる」ということが本当だった場合、子育てよりも競技に打ち込んだ親に対してどう考えるでしょうか?
これは親がアスリートで協議に夢中になる場合だけではなく、サラリーマンが仕事に没頭する場合でも同様です。仕事に打ち込んでホームヘルパーなどを頼んで子育てすると、少年アスリートのような子供が輩出される確率が減るかもしれないのです。
このような(極端な?)考えを持った私ですが、そんな私たち夫婦がどのような子育てをしたのか、少し紹介します。
生後1ヶ月で、わが子を外に連れ出しました。産婦人科医の許可が出るまでわが子を付けての外出は控えていましたが、許可が下りたのですぐにわが子を連れ出しました。
目も見えず音もあまり聞こえないのだろうと思います。それでも肌をなでる風の感触や、陽の暖かさを感じることで、刺激が入って成長が促されるのではないかと思ったのです。
生後1ヶ月では何をしても子供に届かないかもしれませんが、たくさんの刺激を与えてあげたかったのです。
毎日話しかけ、音楽を聞かせました。できる限り母乳で育てました。おもちゃも考えられる限りですべての物を買い与えて育てました。
まだ骨が弱いうちから無理にお座りさせることは避けました。
体ができてきたら、ズリバイを教え込みました。そしてかなり苦労してハイハイをできるようにしました。
ここまでの育て方は、どんな親御さんでもあまり変わらないでしょう。しかしハイハイができるようになったところから、私たち夫婦の育て方は明らかに普通とは違うものになっていきました。
ハイハイが始まるとすぐに、わが子のためにダイニングテーブルを取り払い、ジョイントマットを敷き詰めました。
広い空間を与え、自由に好きなだけハイハイさせることにしました。
わが子はそのころから体力もありました。生後7ヶ月で何もつかまらずに立ち上がることすらありましたから、生後8~9ヶ月で歩かせることも、容易だったと思います。しかし私たち夫婦はつかまり立ちを阻止して立たせないようにし、ハイハイする期間を長くするようにしました。
その結果ハイハイが大好きになり、生後10ヶ月では毎日500mくらいの距離をハイハイし、スピードは1秒間に120cm進むような超高速ハイハイができるようになりました。
これ以上ハイハイが上達しないレベルになった生後11ヶ月で歩くように促すと、すぐに歩けるようになりました。
1歳1ヶ月で靴を履かせて玄関のスロープを上り下りさせました。1歳3ヶ月では急斜面を走って降りるようになりました。
歩くようになったら私が仕事休みの日は、必ず公園に連れて行って歩かせました。
そして1歳7か月くらいから、妻は毎日わが子を公園に連れて行きました。家の近くに公園がないので、車で毎日5km離れたところまで行っていました。真夏にはわが子も妻も、真っ黒に日焼けしていました。
私たち夫婦はいつもわが子を川に連れて行って遊ばせ、山に連れて行って遊ばせました。わが子のためにしか外出していません。家ではお絵描きや積み木にずっと付き合い続けました。
このようにわが子がすべてと言えるくらい子供に寄り添い、多くの経験をさせ続けています。
こんなことができるのも、妻がずっと子供に寄り添える環境があったことと、夫婦ともにほんのわずかでもわが子の能力が上がるようにしたいという強い気持ちがあったからです。
その結果わが子の運動能力は、3歳時点で同年齢では最高レベルまで伸びました。
言葉の発達、文字の読み書き、絵を描くレベル、嘘を見抜く能力など、知能に直結する能力は、おそらくトップレベルです。
走るスピードやジャンプの距離、ボール投げやボール蹴りなどの運動能力だけでなく、バランス感覚や空間認識能力なども幼児とは思えない驚異的な成長をしています。2歳7ヶ月で自転車にも乗れるようになりました。
これは夫婦でわが子の能力が上がるよう育てた賜物です。私たち夫婦のどちらかが、わが子の能力を上げるために努力をわずかでも惜しむ人間であれば、わが子の能力は今よりも伸びていなかったでしょう。
子育てを真剣にすることは楽しい
私はわが子が生まれて趣味のマラソンを止めました。夫婦ともに、わが子を育てることが趣味です。
どこかに出かけるのにも、私たち夫婦は自分のためだけに出かけることはありません。子供を楽しませるために外出します。大人が行きたいところに子供を付き合わせることは今まで一度もありません。
唯一の難点は、私の仕事がやや残業が多いことです。1~2時間残業することがあるので、その時は家に帰ると19:00以降になってしまいます。この時は妻がわが子を完璧に相手をしてくれています。
こんな育て方をしていますから、仕事、趣味、スポーツ競技に力を入れ過ぎて、子育てを顧みないことについて、私たち夫婦は「それはありえない」と思ってしまいます。
ただし私たち夫婦のようにしなくても子供は普通に成長していきます。あまり子育てに力を入れなくてもいいのかもしれません。こんなに真剣に子供に付き合う親は、ほとんどいないと思います。
それでもわが子の知能や運動能力は、同年代では考えられないくらい伸びています。お絵描きのレベル、箸使いができるようになった時期、ボール蹴りの技術、よじ登りのレベル、走るスピード、ストライダーに乗れた時期と技術、自転車に乗れた時期と技術、言葉の習得のスピードなど、どれもネットで紹介されているトップレベルです。もちろんその他のことも習得が驚異的に早いです。
これは親が真剣に子供に付き合ってきた結果だと思っています。
ここまでできる子供になると、自分のことよりも子供の成長が何より楽しみになります。趣味だったマラソンで勝つことより、子供が誰にも負けない成長を続けていることを見ている方が楽しいのです。
何かに没頭してわが子の面倒を見ないなんて、わが子に対して失礼です。親は子供の能力を最大限伸ばすために、精いっぱい頑張るべきだというのが私たち夫婦の考えです。